日常と非日常

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【日常と非日常のお話】 姫路市カウンセリングルーム プチフォレスト

2019/05/31

いつも通りお日様が顔を出す カーテンから差し込む光でうっすらと夢から醒める頃

 

トントンと足音が近づいてきてママの声が聞こえる。

 

「朝だよ 起きてご飯にしましょ」

 

まだ布団からは出たくないから潜り込んで聞こえなかったことにした。いつも当通り足元から掛布団をはがされて観念する。

 

ベッドを降りて着替えているとこんがりと焼けたパンのいい香りに誘われるように家族で食卓を囲む。

 

「いただきます」

 

エッグトーストにコーンスープ ドリンクはオレンジジュース。好物ばかりだった。

 

パパのブラックコーヒーは香りだけでも苦いのがわかる。

 

支度を終えたら順次「忘れ物はない?」「うん、大丈夫だよ、行ってきます」と家を出る。

 

パパは車でお仕事に行く。お兄ちゃんは部活の朝練で少し早めに自転車で学校に行く。

 

ママは家事をしながら最後に家を出る私を玄関まで見送った後仕事に行っている。

 

トコトコと集合場所へ歩いているときは、散歩をしているワンちゃんに手を振ったり、小さな花を見つけるのが日課。

 

集合場所についたらみんなで学校に行く。

 

やっぱり1時間目は眠いな・・・2時間目になると目もシャッキリとして頭も冴えてくる。昨日見たテレビの話や

 

好きなアイドル、ハマっている音楽、ユーチューバーの話で会話が弾む。

 

4時間目はお腹が空いてくるから、お腹鳴りそうなのをヒヤヒヤしたり 鳴っちゃったら咳でごまかしりする。

 

ごまかせてないのは自分が1番良くわかってるから若干恥ずかしいけど、なるものは仕方ない。

 

ランチタイムはいつも机を並べて友達と楽しく食べる。友達のお弁当に美味しそうな玉子焼きを発見。

 

そっと頂いたらすぐバレて笑いながら自分のおにぎりを半分こした。おかずを交換して家によって味が違うことも知った。

 

いつも美味しいお弁当を作ってもらってママにありがとってちゃんと言ってなかったな。

 

今日帰ったら照れくさいけど言ってみよう。放課後の掃除が終わってチャイムが鳴る。

 

友達と公園に寄っていつもの流れでブランコに乗った。風を切る感じがこのまま空だって飛べるんじゃないかって思ってしまうくらい。

 

靴飛ばしして先に3回勝ったら負けたほうはチロルチョコおごりねって。

 

「受けて立つ!」なんて言いながら 意気揚々に先行で靴を飛ばしたら、靴下ごと飛んでった。

 

こんなしょうもない事がツボにはまって友人と一緒になって笑いが止まらなかった。

 

チロルのことも忘れて一しきり遊んで解散し各々自宅へ。

 

「ただいまー」

 

「・・お帰りなさい」

 

「ママ!これ!お弁当、、箱なんだけど、、」

 

「・・?うん、キッチンに出しといてね」

 

「じゃなくて!!いや、出すんだけど、ってあれ?ママ顔色悪くない?」

 

「・・・ああ、何でもないのよ、大丈夫だから気にすることないわ」

 

「そうなの?良かった」

 

「それより・・先に宿題しときなさいね」

 

「はーい」

 

トントンと階段を上がり自室に入ると制服から部屋着に着替えてハッとした。お弁当のお礼言えてないじゃん。

 

また次のタイミングで言うぞ!とにかく宿題片付けなきゃなー。

 

 

「夕食できたわよー」

 

「はーい、すぐ行くー」

 

その日の夕食も相変わらず好物が並んでいた。父も兄もいつも通り食卓を囲んでいるのにそこには空席が一つ。

 

「ねえパパ、ママは?どうして食べないの?」

 

「少し疲れてるみたいなんだ、食事はいいから先に休むって言ってたよ」

 

「そうなんだ、分かった。じゃあ食べたら先お風呂入っちゃうね」

 

「ああ」

 

 

少しの違和感と、かといって、さほど非日常的なわけでもなくて時間は過ぎてった。いつも通り当たり前に。

 

 

翌日、珍しく携帯の目覚ましで起こされる前に起きた。制服に着替えて髪を整えていると朝の美味しい香りがふんわり広がっている。

 

匂いに誘われるように食卓をみんなで囲む。

 

ハニートースト、半熟のスクランブルエッグ、ミネストローネ、ドリンクはアップルジュース。毎度好物ばかり。

 

いつも通りみんなが順番に家を出ていつものやり取りが交わされ それぞれの場所へ出陣していく。

 

登校し眠い目をこすりながら1時間目、冴えてきたらしっかり集中してあっという間にランチタイム。

 

いつもの友人とお弁当を食べながら おかずを少しづつ交換して今日も堪能している。

 

(ああ、昨日はなんだかんだでお礼言えなかったから今日はちゃんと伝えよ。)

 

まったりとランチ後の話に花が咲いていた頃、少し騒がしい…というより焦りにも似た声で先生が私を呼ぶ。

 

 

「落ち着いて聞いてほしい、君の母親が○○病院に救急搬送されたと連絡を受けたんだ。

 

ご家族はすぐに集まってほしいそうだから向かってくれ。病院までは安全のため付き添うから。」

 

「・え・・え・?どういうこと?ママが?

 

・・・その病院 ここから近いから付き添いなくても大丈夫なんで・・・」

 

内心パニックになりながらも、とにかく急がないと、と思った刹那走り出していた。

 

走って15分くらいだろうか。息を切らして走りながら昨日の様子がいつもと違ったのが頭をよぎり

 

なぜ顔色が悪かったのか、どうして大丈夫だなんて真に受けて気にしなかったのか、夕食も取れない程なのに

 

どれだけ無理をしてみんなの夕食や朝食、さらにはお弁当まで用意して・・

 

 

その存在も、してもらえることも、当たり前すぎて それがどれだけ特別なことだったなんて考えもしなかった。

 

病院に駆け込み父と兄の顔をみて 何を言われるかわかってしまった。聞きたくない。言わないで。と願った。

 

「会いに行こう」パパのか細い声は、今にも消えてしまいそうだったのに鮮明に耳に焼き付いた。

行ったのは病室ではなく霊安室だった。

 

「ママ?・・・ママ?まだ言ってないよ?いつもお弁当ありがとうって、まだ何にもママに伝えられてなかったよ?

 

いつも好物を用意してくれて、・・・・・・・・」

 

もう言葉にならなかった。嗚咽で話せないし目の前の現実を受け入れることの準備なんて到底できなくて

 

ただただしがみついて泣いた。押し寄せるやり残したことも、早すぎる旅立ちも。

 

「目を開けて、まだ何も伝えてないよ、起きて・・」最後に絞り出した言葉だったように思う。

 

 

なんて理不尽なことなんだろう。

 

どうしてこの家族に起こったのだろう。

 

どうして何も伝えてこなかったんだろう。

 

明日があることが、どうして当たり前だなんて思ってたんだろう。

 

こんなにも突然 残酷な現実はやってくるのに。

 

星に願ったのは、いつも自分の事だった。

 

価値観の違う【普通】【当たり前】【ものさし】

 

人の数だけそれらはあるんだ。

 

それぞれの意味が違っても、幸せとは何かの答えが個々で違っても、正解は一つじゃないんだ。

 

ならば悔いることなく、生きてる今を大切に生きよう。

 

悔いることなく人と支えあおう。

 

悔いることなく感謝の気持ちで大切なことを見極めよう。

 

自分の視野の限界が、世界の視野の限界なんかでは到底ないんだ。

 

もがいて苦しくても真っ暗だと思っても、見渡してみたら1%の希望の光がある。しがみついてでもこの手に掴もう。

 

それは本当に当たり前? 

 

毎日何が起こるか分かりません。良いこともそうでないことも 突然予想だにしないことが現実となり

この身に降りかかるのです。しかし、どんな出来事からも得るものが必ずあります。

迷って八方塞がりだとしゃがみ込んでしまいそうな時、手を伸ばすことを諦めないでください。

姫路市カウンセリングルームプチフォレストでは伸ばされた手を握り返し、引き上げるお手伝いを

最大限お力添えさせていただきます。

いつでもお気軽にご相談くださいませ。

笑顔の女性